四千年もの昔、エジプトで妊婦に音楽を聞かせて出産の苦痛を和らげたという記録をはじめ、中国、インド、古代ギリシャなどで、
音楽が鎮痛剤や精神療法のひとつとして利用されていたことが史実に残されています。長い歴史の中で、人は体験的に音楽の持つ不思議な力を生活に取り入れてきたのでした。
音楽の持つさまざまな特性について研究がはじまったのが20世紀初頭です。
まず、「生産音楽」として職場の環境整備に活用され、音楽放送の事業化がはじまりました。
第二次世界大戦中に、勤労動員された工場で働く人の疲労を和らげ、事故を減少させるためにつくられたBBCの番組は、その端的な例です。
第二次大戦後は、テープの普及によって音楽が身近なものとなりました。また、音楽の持つさまざまな効用 ― 精神の安定、モラルの高揚、
ストレスの軽減など ― が注目され、BGMが多方面で活用されるようになりました。その後もCDが登場するなど音響技術が進み、
現代では、通信インフラの充実により、インターネットを用いたBGM配信が主流となっています。また、ショッピングエリア、レストラン、ホテル、展示場、職場、医療施設等々、BGMは社会になくてならないものになっています。
加えて近年は、BGMの環境デザインとしての要素も注目されるようになっています。
こうしたデザイン性は、店舗やレストランのマーケティング戦略などにおいて、
販売の重要な要素のひとつとして認められるところとなっています。 |
*70年代以降は、これまでの「聞くための音楽」の他に、環境のさまざまな要素をとり入れた環境音楽、心身の活性化を促す音楽療法、そしてここ数年ブームになっている癒し—と音楽の機能性が幅広く研究され、一般にも浸透してきました。こうしたことを背景に、BGMも心理効果や音響特性などの研究が進められました。