JAPAN BGM ASSOCIATION.

■著作権Q&A

2012年改訂版について

 本稿は2002年(平成14年)3月の刊行以来、BGM業界の多くの皆さまにお使い頂いております。本書作成のきっかけは、平成11年の著作権法改正により「附則14条」が廃止に伴い、演奏権(BGM)の管理が開始されたことにありました。これは、大変に大きな変化でありました。そこで、改めて著作権の原点に帰り、著作権ビジネスであるBGMを原点から見つめ直そうという動機から本稿が編まれたことは、「はじめに」に書かれている通りです。

 この10年を振り返ってみますと、デジタル環境の速い変化には改めて驚かされます。これまで多くの皆さまにお使い頂いた「Q&A」も、その意味では多少時宜にそぐわない表現がみられるようになりました。

 そこで、最低限、現在の状況を反映させた改訂を試みました。改訂にあたっては、これまで皆様にお使い頂いた資料ですので、その雰囲気を壊さぬよう、かつ、今日の状況が適切に反映されるよう配慮し、語句・専門用語の統一、全体の整理を中心に編集を行い、「凡例」を追加しました。規定等の精査については、JASRACの全面的なご協力を頂きました。

 また、改訂版は、これまでのような印刷製本を行わず、協会HPにて閲覧するという方針のため、目次・見出しなどを修正し、目次から該当の箇所にリンクするよう設定しました。

 なお、初版のタイトルは『BGM実務者のための著作権Q&A85』ですが、数字の“85”は削除させて頂きました。今後の改訂により、数字の変化が予想されるからです。本書より『BGM実務者のための著作権Q&A』とさせて頂くことをご了解頂きたく、お願い申し上げます。


2012年度改訂

会務委員会著作権部会


凡例

 公益法人制度改革に伴い、2010年以降、記載法人格に変更が出ている。本文では2012年5月の時点での表記を採用している。

 本文中では法人格は初出だけ提示し、以後は省略した。その主な団体は次の通りである。

 ただし、本文と特に直接の関係がなく、例記されるにとどまっている団体については、初出如何に関わらず、法人格を省略している部分もある。


正式名称

文中表記(略称を含む)

一般社団法人日本音楽著作権協会

日本音楽著作権協会、JASRAC

公益社団法人日本芸能実演家団体協議会

芸団協

一般社団法人日本民間放送連盟

民放連

特殊法人日本放送協会

NHK

公益法人実演家著作隣接権センター

実演家著作隣接権センター、CPRA

CRPA:公益社団法人日本芸能実演家団体協議会実演家著作権隣接センター


1.著作権の基本についてのQ&A

Q1 知的財産権とはどういう権利ですか?

Q2 著作権とはどういう権利ですか?また著作権と著作隣接権とはどのように違うのですか?

Q3 著作者と著作権者とはどのように違うのですか?

Q4 著作物にはどのような種類のものがありますか?

Q5 著作権の保護期間はどのくらいですか?

Q6 著作権の保護期間について注意すべき点はなんでしょうか?

Q7 日本音楽著作権協会とは、どういう組織ですか?

Q8 JASRAC以外の著作権管理団体はありますか?

Q9 芸団協とは、どういう組織ですか?

Q10 著作物の利用許諾を得たり、情報を入手するには、どこに聞けばいいですか?

Q11 音楽著作権などの著作物の使用料はどのように定められていますか?

Q12 著作権侵害にはどのような罰則がありますか?

Q13 JASRACへの音楽使用の手続きはどのようにするのですか?

Q14 JASRAC会員以外の作品を使用する場合の手続きは、どのようにすればいいのですか?


2.BGMと著作権についてのQ&A

Q15 1999年6月に著作権法が改正では、何が変わったのでしょうか?

Q16 付則14条の廃止問題とはどのような問題ですか?

Q17 付則14条の廃止によって何が変わったのでしょうか?

Q18 元栓処理によって演奏使用料を支払うという話を聞きますが、元栓方式とはどのような方式ですか?

Q19 事業所における背景音楽(BGM)としての使用料はどのようになりますか?

Q20 事業所がBGMの著作権処理をしているかどうかは、どのような方法で判断するのですか?

Q21 BGMの著作権使用料はどのように定められていますか?

Q22 BGM用貸出録音テープの録音使用料の支払いはどのようにするのですか?

Q23 BGM用貸出を目的としたCDなどテープ以外のメディアは、BGM用貸出録音テープと取扱いが異なりますか?

Q24 BGM用貸出録音テープ以外の録音テープの著作権処理はどのようにするのですか?

Q25 BGMを契約している店舗やホテルでは、BGMキー局が著作権を処理しているので、改めて著作権使用料を負担することはないと聞いていますが、本当ですか?

Q26 演奏または公衆送信伝達に伴う店舗等での著作権処理は、BGMキー局で処理されるのではないですか?

Q27 CMなどの特注BGMの場合、制作の頻度によってJASRACとの年間契約による「BGM用貸出録音テープ」として取扱うことができますか?

Q28 CMを制作する場合はどのような著作権処理が必要ですか?

Q29 BGM契約をしている顧客からのCM制作については、改めて申告を行う必要がないと聞きましたが、本当ですか?

Q30 BGM会社は、衛星やインターネットを使った音楽の配信にBGMの楽曲を提供することができますか?

Q31 BGM番組を海外で使用することができますか?

Q32 代理店・フランチャイジーは、キー局のBGM番組を自由に複製したり一部使用したりすることができると聞きましたが、本当ですか?

Q33 代理店・フランチャイジーがBGMキー局にロイヤリティを支払っているので、著作権に関する費用はすべてキー局が負担すると聞きましたが、本当ですか?

Q34 デパートの店内CM音楽を受注したので、作詞作曲をそれぞれのアーティストに依頼し、録音制作と完パケ商品の製造までを当社が行いました。この場合、著作権や著作隣接権はどこが保有することになりますか?

Q35 ネット配信によるBGMの著作権処理はどのようになりますか?

Q36 インタラクティブ配信・ダウンロード形式・ストリーム形式とはなんですか?


3.放送局、有線放送、レコード会社などと著作権についてのQ&A

Q37 民間放送局では、放送番組の使用楽曲についてどのように著作権処理をしているのですか?

Q38 テレビやラジオの放送では、市販のCDやカセットなどが使い放題で自由に選曲し編曲できると聞きましたが、本当ですか?

Q39 海外放送局の番組を録音固定し、日本国内の放送局で再送信する場合には、どのような著作権などの処理が必要ですか?

Q40 レコード会社が洋楽について保有している権利はどんな権利ですか?

Q41 レコード会社の保有する楽曲をBGMとして使用する場合、使用許諾料が各社によって異なったり、楽曲によって異なったりすることがありますが、料金基準はどのように定められていますか?

Q42 レコード会社のプロデューサーから自分のプロデュースするアルバムのBGM使用について自分がOKすれば問題はありませんと言われましたが、本当に問題はないのでしょうか?

Q43 アーティストによって著作権料は変わるのでしょうか?

Q44 輸入盤は複製しても著作権に触れないという話を聞きましたが、本当ですか?

Q45 有線放送は著作権をクリアしていますか?

Q46 有線放送でNHKや民間放送局の番組を流していますが、問題はないのでしょうか?


4.お店やホテル、イベントなどと著作権についてのQ&A

Q47 市販CDをBGMとして使用する場合、JASRACと契約すれば、他に著作権等に関する許諾を得る必要はないと聞いていますが、レコード会社が使用料を支払うように言ってきました。支払う必要があるのでしょうか?

Q48 市中のレコード店から市販のCDやカセットを購入し、これをライブラリーとして在庫し、ホテルはデパートに有料で貸出交換をしている業者がありますが、問題はありませんか?

Q49 ホテルのロビーやスーパーの店内で市販のCDやカセットを使って音楽を流すことは認められていますか?

Q50 FMやAMなどのラジオ放送を受信して店舗や事務所などでBGMとして使用した場合、著作権使用料はかかりますか?

Q51 ラジオなどの家庭用受信機による個人的使用の範囲についてのガイドラインなどはありますか?

Q52 FMやAM、テレビなどの放送をそのままカセットやビデオに録音録画して、店内の放送設備で再生しBGMとして利用したいのですが、問題はありますか?

Q53 ホテルの宴会場でお客様が自分の好きなCDやカセットなどを会場に持ち込み、結婚披露宴のBGMとして使いたいといってきました。問題はありますか?

Q54 ホテルの宴会場でお客様が自分の好きなCDやカセットなどを結婚披露宴の進行に合わせて編集して流してほしいといわれました。問題はありますか?

Q55 新しいレストランでBGMの代わりにレコード店で購入したビデオやDVDソフトをモニターで流そうと思います。この場合、著作権上の問題があるでしょうか?

Q56 ビデオソフトの「業務使用」とは、具体的にどんな上映形態をいうのですか?

Q57 カラオケ施設における著作権処理はどのように行なわれていますか?

Q58 カラオケ教室で生徒の練習用にCDやテープをコピーしたいと思いますが、問題はありませんか?

Q59 コンサートやイベントなどで音楽を演奏する場合には、どのような手続きが必要ですか?

Q60 オフィスビルのアトリウムで無料のポップスコンサートを行いたいのですが、著作権使用料はいくらになるのでしょうか?

Q61 コンサートの企画で配布するプログラムに楽譜と歌詞を掲載する予定ですが、どのような処理が必要ですか?


5.知ってあれこれ著作権についてのQ&A

Q62 著作権と楽曲使用料はどう違うのですか?

Q63 著作権印税とはどのようなものですか?

Q64 肖像権とはどんな権利ですか?

Q65 クラシックには著作権がないので、BGMやCMに自由に使えると聞きましたが、本当ですか?

Q66 著作権のない曲はBGMやCMに自由に使えると聞きましたが、著作権のない曲というものはあるのでしょうか?

Q67 ノベルティ商品に音楽を使う場合、著作権処理はどのようにするのでしょうか?

Q68 CMのナレーションには著作権はあるのでしょうか?

Q69 ラジオ体操の著作権処理はどのようにするのですか?

Q70 ウェストミンスター寺院の鐘の著作権処理はどのようにするのですか?

Q71 CDやMDなどの再生デッキの中には、内蔵メモリーやICカードを使って曲順をプログラミングして任意の時間に任意の曲を流すことができますが、これはアルバムの改変にならないでしょうか?

Q72 2台のCDプレーヤーでそれぞれの音楽とCMを流した場合、その音楽はCMにシンクロしたとしてCM処理をしなければなりませんか?

Q73 複数の曲を使ってメドレー曲を制作する場合、著作権処理はどのようにするのですか?

Q74 自分で作曲した曲を仕事で使った場合、著作権料を会社に請求できますか?

Q75 電話の保留音にBGMを使った場合、著作権処理はどのようにすればいいのですか?

Q76 カラクリ時計を広場のシンボルとして制作納入します。ご当地にゆかりの歌曲を毎正時に流して時刻を報せます。このような場合の著作権処理はどのようにすればいいでしょうか?

Q77 ダビングサービスを利用して音楽ソフトやビデオソフトを複製することは違法ですか?

Q78 海賊盤のカセットやCD、ビデオソフト、コンピュータープログラムなどを購入することは罪になりますか?

Q79 社内研修会などで、放送番組を録音・録画したものを教材として社員に見せたり聞かせたりすることはできますか?

Q80 ホームページに著作物を提示する場合、どんな点に注意しなければなりませんか?

Q81 デジタル機器で音楽を録音・録画する場合は、補償金を支払わなければならないと聞きましたが、どのように支払うのですか?


1.著作権の基本についてのQ&A

Q1 知的財産権とはどういう権利ですか?

A1  知的財産権には、産業所有権、著作権などがあります。


 知的財産権は、知的所有権ともいい、最近のIT革命や貿易問題で話題になることが多い権利です。ゲノム創薬や遺伝子組み換え作物など特許を伴う商品開発は勿論、映画や音楽、コンピュータソフトなど技術の発展に伴い、権利者と利用者、さらに国家間の利害に直結し調整を必要とする例が増えてきたため、一般の常識用語として目にすることが多くなってきました。日本においても政府に審議会が設けられ国策として展開を図っていることから、ますます重要な権利として注目されていくでしょう。

 産業所有権は特許権・実用新案権・意匠権・商標権をいい、登録により権利が発生します。これに対し著作権は著作人格権・著作権・著作隣接権をいい、著作物を創造した時点で権利が自動的に発生します。これを無方式主義といい、産業所有権との大きな違いとなっています。

Q2 著作権とはどういう権利ですか?また著作権と著作隣接権とはどのように違うのですか?

A2 「著作権」とは、文芸、学術、美術、音楽などのジャンルで人間の思想、感情を創作的に表現したもの、すなわち文化的な創作物を保護の対象とする権利をいいます。そしてそれを創作した人物を「著作者」といいます。


 著作権とは、

著作者の人格的な権利である「著作者人格権」

著作者の財産的な権利である「著作権」

著作物の伝達を行なう実演家、レコード制作者、放送事業者がそれぞれ持っている権利である「著作隣接権」

の3つの権利の総称で、通常は著作人格権・著作権と著作隣接権を区別しないで使われています。

実務上は、①②を合わせて、あるいは②のみをさして「著作権」といい、③の「著作隣接権」とは区別しています。

 著作権法は、これらの権利を定め、その文化的所産の公正な利用に留意しながら、著作物などの権利の保護を図る法律です。

(表1)著作者の権利の内容(著作人格権・著作権)

 著作者の人格権(著作者の人格的利益を保護する権利)

著作者の人格権(著作者の人格的利益を保護する権利)

公表権(18条)

未公表の著作物を公表するかどうか等を決定する権利

氏名表示権(19条)

著作物に著作者名を付するかどうか、付する場合に名義をどうするかを決定する権利

同一性保持権(20条)

著作物の内容や題号を著作者の意に反して改変されない権利

 著作者(財産権)(著作物の利用を許諾したり禁止したりする権利)



著作権(財産権)(著作物の利用を許諾したり禁止する権利)

複製権(21条)

著作物を印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再生する権利

上演権・演奏権(22条)

著作物を公に上演し、演奏する権利

上映権(22条の2)

著作物を公に上映する権利

公衆送信権等(23条)

著作物を公衆送信し、あるいは公衆送信された著作物を公に伝達する権利

口述権(24条)

著作物を口頭で伝える権利

展示権(25条)

美術の著作物又は、未発行の写真の著作物を原作品により公に展示する権利

頒布権(26条)

映画の著作物をその複製物の譲渡又は、貸与により公衆に提供する権利

譲渡権(26条の2)

映画の著作物を除く著作物をその原作品又は、複製物の譲渡により公衆に提供する権利(一旦適法に譲渡された著作物のその後の譲渡には譲渡権が及ばない)

貸与権(26条の3)

映画の著作物を除く著作物を、その複製物の貸与により公衆に提供する権利

翻訳権・翻案権等(27条)

著作物を翻訳し、編曲し、変形し、脚色し、映画化し、その他翻案する権利

二次的著作物の利用に関する権利(28条)

翻訳物、翻案物などの二次的著作物を利用する権利

出典:文化庁ホームページ

(表2)著作隣接権と権利保有者

著作隣接権

著作隣接権

著作物の公衆への伝達に重要な役割を果たしている者(実演奏家、レコード製作者、放送事業者及び有線放送事業者)に与えられる権利

著作隣接権の発生

実演、レコードの固定、放送又は、有線放送を行った時点で発生する(無方式主義)

著作隣接権の保護期間

実演、レコードの発行、放送又は、有線放送が行われたときから50年間

<実演奏家の権利の内容>


実演家人格権

氏名表示権(90条の2)

自分の実演に実演奏家の名を付すか、付す場合に名義をどうするかを決定する権利

同一性保持権(90条の3)

自分の実演について実演家の名誉や声望を害する改変をされない権利



著作隣接権

録音権・録画権(91条)

自分の実演を録音・録画する権利

放送権・有線放送権(92条)

自分の実演を放送・有線放送する権利

送信可能化権(92条の2)

自分の実演を端末からのアクセスに応じ自動的に公衆に送信し得る状態に置く権利

譲渡権(95条の2)

自分の実演の録音物又は、録画物を公衆に譲渡する権利(一旦適法に譲渡された実演の録音物又は、録画物のその後の譲渡には、譲渡権はない)

貸与権(95条の3)

商業用レコード(市販のCD等)を貸与する権利(最初の販売後1年のみ)

放送二次使用料を受ける権利(95条)

商業用レコードが放送・有線放送で使用された場合の使用料を放送事業者・有線放送事業者から受ける権利

貸レコードについて報酬を受ける権利

(90条の3)

貸レコード業者から報酬を受ける権利(貸与権消滅後49年間)

レコード製作者の権利

著作隣接権

複製権(96条)

レコードを複製する権利

送信可能化権(96条の2)

レコードを端末からのアクセスに応じ自動的に公衆送信し得る状態に置く権利

 

譲渡権(97条の2)

レコードの複製物を公衆に譲渡する権利(一旦適法に譲渡されたレコードの複製物のその後の譲渡には譲渡権はない)

 

貸与権(97条の3)

商業用レコードを貸与する権利(最初の販売後1年間のみ)

放送二次使用料を受ける権利(97条の3)

商業用レコードが放送・有線放送で使用された場合の使用料を放送事業者・

有線放送事業者から受ける権利

貸レコードについて報酬を受ける権利(97の3)

貸レコード業者から報酬を受ける権利(貸与権利消滅後49年間)

放送事業者の権利


著作隣接権

複製権(98条)

放送を録音・録画及び写真的方法により複製する権利

再放送権・有線放送権(99条)

放送を受信して再放送したり、有線放送したりする権利

テレビジョン放送の伝達

(100条)

テレビジョン放送を受信して画面拡大する特別装置(超大型テレビ、オーロラビジョン等)で公に伝達する権利

有線放送事業者の権利

著作隣接権

複製権(100条の2)

有線放送を録音・録画及び写真的方法により複製する権利

放送権・再有線放送権

(100条の3)

有線放送を受信して放送したり、再有線放送したりする権利

有線テレビジョン放送の

(100条の4)

有線テレビジョン放送を受信して画面を拡大する特別装置で公に伝達する権利

出典:文化庁ホームページ

Q3 著作者と著作権者とはどのように違うのですか?

A3 著作者は著作物を創作する者をいうのに対して、著作権者は著作権を保有する者をいいます。


 著作者は、著作権法第61条によって保有する財産権としての著作権の全部または一部を他に譲渡することができます。また財産権ですから相続することも可能です。このように著作者からの譲渡または相続によって著作権を保有している者を著作権者といいます。したがって、著作者と著作権者とは、一致するものではなく、また部分譲渡によって複数の著作権者が存在することもあります。

 音楽著作物の場合、作詞・作曲家が著作者であり、作詞・作曲家から著作権譲渡を受けた音楽出版社が著作権者になっている例が普通です。

Q4 著作物にはどのような種類のものがありますか?

A4 著作物には、言語、音楽、舞踊・無言劇、美術、建築、地図・図形、映画、写真、コンピュータソフトなどの種類があります。内容については表3に示します。

(表3)著作物の種類

言語の著作物

論文、小説、脚本、詩歌、俳句、講演など

音楽の著作物

楽曲および歌詞

舞踊、無言劇の著作物

日本舞踊、バレエ、ダンスなどの舞踊やパントマイムの振り付け

美術の著作物

絵画、版画、彫刻、まんが、書、舞台装置など。美術工芸品も含む

建築の著作物

建造物自体。設計図は図形の著作物

地図・図形の著作物

地図と学術的な図面、図表、模型など

映画の著作物

劇場用映画、テレビ映画、ビデオソフトなど

写真の著作物

写真、グラビアなど

プログラムの著作物

コンピュータープログラム

 このほかに次のような著作物もあります。著作物は技術革新や社会変化に伴って新たなものが加わるので、常にそのような視点に立った判断が必要です。

二次的著作物

(表3)の著作物(原著作物)を翻訳、編曲、変形、翻案し作成したもの

編集著作物

百科事典、辞書、新聞、雑誌、詩集などの編集物

データベースの著作物

データベース

なお、次にあげるものは、著作物であっても、著作権はありません。

憲法そのほかの法令(地方公共団体の条例、規則を含む)

国や地方公共団体の告示、訓令、通達など

裁判所の判決、決定、命令など

①から③の翻訳物や編集物で国または地方公共団体の作成するもの

Q5 著作権の保護期間はどのくらいですか?

A5 著作物の種類によって著作権がいつ発生するかが異なりますが、起算年から50年が、日本における保護期間となります。

1.日本の著作権法では、著作権の存続期間は、著作物の創作のときに始まり、著作者の 死後50年を経過するまでの間としています。また共同著作物については最後に死亡した著作者の死後50年を経過する間を、団体名義の著作物についてはその著作物の公表後50年を経過する間を保護期間とします。映画の著作物の著作権については、その著作物の公表後70年を経過する間、保護期間が存続します。

 保護期間の計算方法は、著作者が死亡した日または著作物が公表もしくは創作された日の翌年から起算します。

2.著作隣接権の存続期間は、次の行為が行われた日の翌年から起算して50年を経過する間とします。

実演に関しては、その実演を行ったとき

レコードに関しては、その音を最初に固定したとき

放送に関しては、その放送を行ったとき

有線放送に関しては、その有線放送を行ったとき

Q6 著作権の保護期間について注意すべき点はなんでしょうか?

A6 著作権の保護期間について注意すべき主な点は、一定の範囲で永久に守られる「著作者人格権、国によって異なる保護期間、戦争当事者間で行われる戦時加算です。

1.著作者人格権は、著作者だけが持っている権利で、譲渡したり、相続したりすることはできません。これを一身専属制といいます。この権利は著作者の死亡によって消滅しますが、著作権法第60条において、その著作物の著作者が存在しなくなった後においても、著作者が存在しているとするならばその著作者人格権の侵害になるような行為をしてはならないと定められており、著作者の死後も一定の範囲で永久に守られることになっています。

2.我が国の著作権の保護期間は50年ですが、国によって保護期間が50年に満たない国やそれ以上の期間を設けている国があります。この場合、保護期間はどちらか短い期間の方を適用することになっています。

 現在、我が国の著作権の保護期間は50年ですが、国際的な趨勢としては著作物の保護期間が長くなる方向にあります。すでに70年から90年の期間を設けている国が増えてきています。わが国もいずれ保護期間の延長という事態に至ることを視野に入れておく必要があります。しかし創作活動を著しく制限するような保護についてはパブリック・ドメイン(PD。著作権即ち知的財産権が発生していない状態、又は消滅した状態)の取り扱いを含めもっと議論が行われるべきでしょう。

3.我が国は、第2次世界大戦において英米などの交戦国との間で国交を断絶しました。著作権法では、国際条約によって国交断絶の期間を保護期間に加算して計算することを定めています。これを戦時加算といい、該当する国の著作物を使用する場合には注意が必要です。

Q7 日本音楽著作権協会とは、どういう組織ですか?

A7 一般社団法人日本音楽著作権協会は、日本国内の作曲家・作詞家および音楽出版社を会員とし、委託された著作物の管理を行うとともに、外国曲についても2010年3月現在、世界84カ国5地域114団体と管理契約を結び、使用料を徴収し著作権者に配分しているわが国最大の音楽著作権管理団体です。JASRACの愛称でも知られます。

 日本音楽著作権協会(以下JASRAC)は、「著作物に関する仲介業務に関する法律」(仲介業務法)に基づき文化庁長官の仲介業務の許可を受け、70年余唯一の音楽著作権を管理する団体として存続してきました。2001年10月施行の「著作権等管理事業法」により音楽著作権についての権利は、同協会以外にも委託できるようになりました。同協会は多くの国内の作詞家、作曲家、音楽出版社など、音楽の著作者・著作権者を会員とし、会員から音楽著作権の管理委託を受けて、国内外で使用される会員の作品の管理を行うとともに、海外の著作権管理団体と契約を結び、日本だけではなく世界の音楽著作権も委託管理している団体です。

 JASRACでは、本部に出版・録音・ビデオグラム・映画・放送・有線放送/インタラクティブ配信などで音楽を利用する場合の許諾手続きの窓口を設けています。また全国17ヵ所の支部では、演奏会、飲食店などでのカラオケや生演奏、カラオケボックス、CDレンタル、ビデオ上映などの手続きに対応しています。許諾手続きや使用料は、文化庁長官に届け出をした「使用料規程」により定められ、著作物の利用者から支払われた使用料は、会員及び信託者、並びに、契約関係にある世界各国の著作権管理団体を通じて海外の著作権者に配分しています。

Q8 JASRAC以外の著作権管理団体はありますか?

A8 他にも著作権等管理事業法によって新たに生まれた音楽著作権を管理する法人はあります。

 「著作物に関する仲介業務に関する法律」(仲介業務法)の廃止と新たな「著作権等管理事業法」の制定に伴い、従来JASRACにより独占的に管理されてきた音楽著作権についてもJASRAC以外の法人の参入が可能になりました。その結果、㈱イーライセンス、㈱ジャパン・ライツ・クリアランス、ダイキサウンド㈱、㈱ジャパン・デジタル・コンテンツなどが文化庁の登録を受けて参入し、音楽著作権の管理を開始しました。このようにJASRACと同様に音楽著作権の管理をおこなおうと新たに進出してきた会社はJASRACとは競合団体となります。

Q9 芸団協とは、どういう組織ですか?

A9 芸団協とは、公益社団法人日本芸能実演家団体協議会の略称で、国内の俳優、声優、歌手・演奏家などの音楽家、舞踊家、落語・漫才・奇術・司会などの演芸家、演出家、舞台監督などの芸能実演家によって構成されている団体です。

 日本芸能実演家団体協議会(以下、芸団協)は、芸能実演家70団体、約9万人によって構成されています(2012年3月)。主な業務は、実演家の権利に関わる業務をおこなう「実演家著作隣接権センター(CPRA)」の運営、芸能文化の拠点「芸能花伝舎」の運営、研修事業、芸能に関するさまざまな調査研究、政策提言、情報収集・発信など実演芸術の振興を主な事業の柱としています。

 実演家著作隣接権センター(CPRA)は、放送や有線放送、CDのレンタルでの二次使用、放送番組などの目的外利用に伴う使用料などを放送事業者や有線放送事業者、CDレンタル店から徴収し、権利者に分配する業務をおこなっています。また、各国管理団体と協定を結び、商業用レコード二次使用料などの外国実演家への、分配業務をおこなっているほか、芸団協とJASRAC、日本レコード協会の3者で私的録音補償協会(SARAH)、私的録画補償協会(SARVH)を設立し、私的録音・録画補償金の徴収、分配などもおこなっています。

 ※SARAH、SARVHについては「Q.10」参照。

Q10 著作物の利用許諾を得たり、情報を入手するには、どこに聞けばいいですか?

A10 現在、次表の通りの団体が著作権の管理団体として活動しています。BGMに限らず、音楽や音楽以外の企画で著作物を使用する場合は、該当する著作物や情報を管理する各団体に照会し、著作権処理を確実におこなってください。(表4)。

(表4)主な著作権管理団体と連絡先

ジャンル

著作権管理団体

連絡先

音楽

日本音楽著作権協会

http://www.jasrac.or.jp/

レコード

日本レコード協会

http://www.riaj.or.jp/

実演

日本芸能実演家団体協議会

http://www.geidankyo.or.jp/

放送

日本民間放送連盟

http://www.j-ba.or.jp/

ビデオ

日本映像ソフト協会

http://www.jva-net.or.jp/

教育映画等

映像文化製作者連盟

http://www.eibunren.or.jp/wordpress/

脚本

日本脚本家連盟

http://www.writersguild.or.jp/wgj/

日本シナリオ作家協会

http://www.scenario.or.jp/

文芸著作物

日本文藝家協会

http://www.bungeika.or.jp/

美術

日本美術家連盟

http://www.jaa-iaa.or.jp/

書籍出版

日本書籍出版協会

http://www.jbpa.or.jp/

写真

日本写真著作権協会

http://www.jpca.gr.jp/

個人録音

私的録音補償金管理協会

http://www.sarah.or.jp/

個人録画

私的録画補償金管理協会

http://www.sarvh.or.jp/dis/a_navi.html

文献複写

日本複写権センター

http://www.jrrc.or.jp/

コンピューターソフトウエア

コンピューターソフトウエア著作権協会

https://www2.accsjp.or.jp/

著作権情報

著作権情報センター

http://www.cric.or.jp/

Q11 音楽著作権などの著作物の使用料はどのように定められていますか?

A11 それぞれの著作物を管理する団体が、公正な利用を図るための使用料規定を定め、これを文化庁長官に届け出ています。

 それぞれの著作権管理団体は、委託された著作物の権利を集中的に管理し、公正に利用者に対する利用を許諾する立場にあるため、使用料を適切に定めなければなりません。そこで文化庁長官への業務届け出をした著作権管理団体については、著作者・著作権者および利用団体などとの意見聴取、調整などをおこない文化庁長官へ届け出をした「使用料規程」により管理をおこなっています。現在、この使用料規程を適用している団体は、日本音楽著作権協会、日本脚本家連盟、日本シナリオ作家協会、日本文芸著作権保護連盟、私的録音補償金管理協会、私的録画補償金管理協会です。その他の団体も、それぞれ公正な利用を図るための使用料規程を定めています。

Q12 著作権侵害にはどのような罰則がありますか?

A12 民事上の請求と刑事上の罰則の2面から責任を追及されることになります。

 著作権のある著作物を著作権者の許諾を得ないで無断で利用すれば、著作権の侵害になります。また、著作者に無断で著作物のタイトルや内容を変えたり、著作者がベンネームや芸名で表示を希望しているのに、勝手に本名をつけて発行したりすれば、著作者人格権の侵害になります。著作権を侵害すると、次に述べるような責任を追及されます。

1.民事上の請求  すでに述べたような権利侵害の事実があるときには、権利者は権利の侵害をしたものに対して次のような請求をすることになります。こうした請求は、当事者間で争いがある場合には、最終的には裁判所に訴えて判断してもらうことになります。

侵害行為の差止請求

損害賠償の請求

不当利得の返還請求

名誉回復などの措置の請求

2.刑事上の罰則 著作権侵害は親告罪とされていますから、被害者が侵害をしたものに対し告訴し、有罪となれば、著作権侵害の場合は、10年以下の懲役もしくは1千万円以下の罰金、著作者人格権侵害の場合は、5年以下の懲役または500万円以下の罰金、法人の場合は3億円以下の罰金となっています。

Q13 JASRACへの音楽使用の手続きはどのようにするのですか?

A13 音楽著作物を利用するときは、著作権管理団体であるJASRACに利用許諾を申請し、許諾を受け、所定の使用料を支払うことになります。

 JASRACへの申請は、必ず所定の「著作物利用許諾申請書」によっておこなうことになっています。この申請書は、演奏、録音、出版など、音楽著作物の利用形態別に様式が定められているので、該当する申請書に必要な事項を書き込み、利用する楽曲リスト「利用著作物報告書」を添えて担当窓口に提出します。

 提出された申請書に基づき「著作物利用許諾証」を交付されますので、JASRACの請求する使用料を支払います。録音やビデオグラム、出版の場合は、交付された許諾番号と許諾証紙を貼付または印刷し、JASRACが許諾したことを明示しなければなりません。

Q14 JASRAC会員以外の作品を使用する場合の手続きは、どのようにすればいいのですか?

A14 著作者または著作権者、JASRAC以外の管理事業者との交渉が必要となります。

 JASRACに信託していない作詞・作曲家は、自身で作品を管理したり、JASRAC以外の著作権管理事業者に管理を委託しています。その場合には、作品名から著作権者または著作権管理事業者を確認し、著作権の手続き処理をおこないます。この時の使用条件は、著作権者個人の場合は、直接折衝により合意した内容となり、管理事業者の場合は、当該事業者が文化庁に届け出た使用料規程等に基づいて決められます。

 また、著作隣接権の使用料については、会員、非会員を問わず当事者間の折衝によって決定されますので、アーティストや作品によって手続き、条件が異なります。


2.BGMと著作権についてのQ&A

Q15 1999年6月の著作権法改正では、何が変わったのでしょうか?

A15  主な改正点は次の5点です。

1.

コピープロテクションなどの技術的保護手段回避の規制など

2.

著作物などに付される権利管理情報の改変などの規制

3.

譲渡権の創設

4.

上映権の対象の拡大

5.

付則14条の廃止

 1999年6月15日、付則14条の廃止などを含む著作権法改正法案が衆議院で可決し、2000年1月1日より施行されました。その目的は、デジタル・ネットワーク化などに対応した国際的な枠組みとして1996年に採択されたWIPO(世界知的所有権機関)の著作権条約批准に向けた法改正が主なもので、著作権管理の国際的動向を踏まえ、国内法が整備されたものです。

 改正点5点の内容は以下の通りです。

1.無断複製などを防止するコピープロテクションなどの技術的保護手段回避の規制など

 多くのビデオソフトには無断複製を防止するための技術的保護手段が実施されています。この複製防止手段を回避し複製を可能にする装置を製造販売したり、このような装置を使って複製をおこなったものに対して罰則を設けました。

2.著作物などに付される権利管理情報の改変などの規制

 電子透かしなどの技術で権利処理を自動的に行ったり、違法複製防止に役立てることが可能になっています。このような権利を管理するための情報を故意に除去・改変する行為を著作権などの侵害行為とみなし、営利を目的としてこれをおこなうものには罰則を設けました。

3.譲渡権の創設

 映画の著作物だけに認められていた譲渡に関する権利をすべての著作物に権利として認めました。

4.上映権の対象の拡大

 映画の著作物だけに認められていた上映権を、美術、写真、言語の著作物をディスプレイ画面に映写する場合など、すべての著作物に権利として認めました。

5.付則14条の廃止

 レコード演奏のすべてに著作権者の権利を認めました。

Q16 付則14条の廃止とはどのような問題ですか?

A16 日本の特殊な事情から、小売店やレストランなどの事業所でのBGMの利用については、1970年から“当面免除”ということで管理がされずに来ました。この規定が著作権法附則14条であることから「附則14条問題」と呼ばれています。これは国際的に見て特異なケースであり、付則14条を廃止し、著作権を管理しようと長年にわたり検討されてきた問題です。

 付則14条とは、1970年に施行された著作権法の中で、著作権に対する国民の理解がまだ十分でなかった当時の社会情勢を配慮したことによる経過措置を定めたものでした。

 具体的には、政令で定める一部の事業所、すなわち放送や有線放送、音楽喫茶やダンスホールなどを除いて、小売店やレストランなど多くの事業所では、当分の間、適法に録音されたレコードやカセット、CDなどを著作権者の許諾を得ることなく無償で自由に使うことができるというものでした。

 生演奏とレコード演奏は、国際的に同じ取り扱いとされていますが、日本では付則14条により区別されており、レコード演奏に権利が及ばない状態が長く続いてきました。世界各国の著作権団体と契約が結ばれ、相互かつ広範に音楽著作権の管理がおこなわれる今、諸外国から非難される不公平、不均衡を是正し、この制限をおこなっている付則14条を廃止して、国際的な調和を図ろうとしたのが「付則14条問題」といわれているものです。

 付則14条の廃止を含む著作権改正法案は、1999年6月15日の通常国会を通過し、2000年1月1日より法律施行、関係機関の折衝・調整を経て、2002年4月1日よりBGMの管理が開始されました。

Q17 付則14条の廃止によって何が変わったのでしょうか?

A17 2001年10月、JASRACの著作権使用料規程に「第12節 BGM」が新しく定められ、BGM、有線音楽放送、衛星放送や市販CDを使用している事業所は、著作権使用料(演奏権、公衆伝達権)をJASRACに支払うことになりました。

 付則14条が廃止された結果、レコード、カセット、CDなどの録音物をBGMとして再生演奏している事業所では、JASRACに対し所定の手続きによって演奏使用料を支払うことになりました。

 また、今まで使用料を免除されていた有線音楽放送や衛星放送、FM放送を利用している事業所も「公衆送信の伝達」に伴う使用料をJASRACに支払うことになりました。(支払い方法・契約については次のQ18をご覧下さい)

 文化庁では、関係業界との調整をおこない、さらに十分な周知期間をおいて、2002年4月1日から管理をスタートさせました。

Q18 元栓処理によって演奏権使用料を支払うという話を聞きますが、元栓方式とはどのような方式ですか?

A18 元栓方式とは、スーパーや専門店、レストランなどのBGM利用者が、JASRACと元栓処理事業者としての契約を締結したBGM事業者、放送事業者、有線放送事業者などと音源提供契約をしている場合、その音楽利用者が直接著作権使用料(演奏権使用料)を払うのでなく、音源提供事業者がまとめてJASRACに支払う方式をいいます。

 「元栓方式」は、欧米などで既に演奏使用料などの支払いに採用されている方式で、日本においても付則14条廃止後の対策として採用が決定しました。BGM事業者、放送事業者、有線放送事業者等の元栓処理事業者の音源を利用する事業所は、直接JASRACと契約したり使用料を支払ったりする必要はなく、音源を提供する元栓処理事業者がJASRACと契約し使用料を支払うことになりました。

 これに対し、元栓処理事業者の音楽を使わない事業所は、直接JASRACと契約をしなければなりません。この方式を「個別方式」といいます。

Q19 事業所における背景音楽(BGM)としての使用料はどのようになりますか?

A19 音楽をBGMとして事業所で流した場合には、2002年4月から使用料を支払うことになりました。使用料は、事業所の業種・業態、規模などにより次のように定められています。

1.支払の対象となる業種とならない業種

管理対象外施設で使用料を支払わなくてもいい事業所

管理対象施設であるが、当面支払いを免除される事業所

医療福祉施設、学校、事務所、工場、ワゴンセール・露店、レコード販売店

管理対象施設で使用料を支払う事業所

銀行、ブティック、百貨店、スポーツ施設、遊園地などの業種施設及び社交飲食、店、宿泊施設等

2.施設における使用料

「一般社団法人 日本音楽著作権協会 使用料規程 第2章 第12節 参照」

(表5)

①一般の店舗等の場合

区分

店舗等の面積

年額使用料

1

500㎡まで

6,000円

2

1,000㎡まで

10,000円

3

3,000㎡まで

20,000円

4

6,000㎡まで

30,000円

5

9,000㎡まで

40,000円

6

9,000㎡を超える場合

50,000円

②宿泊施設の場合

区分

宿泊人数

年額使用料

1

100人まで

6,000円

2

200人まで

10,000円

3

300人まで

20,000円

4

400人まで

30,000円

5

500人まで

40,000円

6

500人を超える場合

50,000円

Q20 事業所がBGMの著作権処理をしているかどうかは、どのような方法で判断するのですか?

A20 JASRACの交付する「BGM許諾表示証」の有無によって判断します。

 JASRACでは著作権処理をしている事業所について、「許諾表示証」を交付し店頭等で表示するよう求めています。演奏権または公衆送信伝達権の使用について許諾を得た事業所では許諾表示証を明示することにより著作権処理済みであることが判断されるわけです。

 元栓処理事業者によって処理されている事業所では黄色の表示証、個別処理事業所には緑色の表示証と、区別されています。

Q21 BGMの著作権使用料はどのように定められていますか?

A21 JASRACの著作権使用料規程に定められています。BGM用貸出録音テープ製作配給事業者は第7節および第12節、有線放送事業者は第8節および第12節の規定により算出します。

 現在BGM用テープ・CD等製品の録音制作に関わる録音使用料とそれを演奏あるいは公衆送信伝達(放送、有線放送)した際に発生する使用料、新しいネット配信に関わる使用料の3つに区分され、それぞれ次のとおり定められています。

1.録音使用料

 背景音楽(BGM)用貸出録音テープ(以下BGM用貸出録音テープ)の場合は、著作権管理団体であるJASRACに対して、利用者団体であるバックグラウンド・ミュージック協議会(1977年4月社団法人日本バックグラウンド・ミュージック協会、2012年4月一般社団法人日本BGM協会)が交渉にあたりました。1968年、両者の協議が成立し、JASRACの「使用料規程」第5節2に“背景音楽(BGM)用として貸出される録音テープ”の規定が定められました。この協議を受けて、協会加盟のBGMキー局各社は、JASRACと個別に契約を締結し、現在に至っています。なお。第5節2はその後のメディアの変化を受けて“背景音楽(BGM)として貸出されるCD等”に改正されています。

 使用料の算定は、BGM業界の利用形態を考慮して、年間契約を締結する場合に限り、録音回数及び製作本数のいかんにかかわらず、1顧客に対して年額1,200円以内とする、と定められており、毎年4月1日現在の顧客数を乗じて計算されます。顧客数は、キー局の直接顧客および有線による全顧客を1/1件として計算します。

 年間録音使用料 = 顧客数 × 基準単価1,200円 + 消費税

 

 現在、JASRACとの著作権に関する折衝は、日本BGM協会会務委員会著作権部会が主管し、同委員会の委嘱を受けた著作権部会が実際の作業をおこなっています。

   

2.演奏権および公衆送信伝達権に関わる使用料

   

 付則14条の廃止に伴うBGM使用料については、2002年4月より「使用料規程」第12節にBGMの使用に関わる規定が定められました。

   

3.ネット配信に関わる使用料

 

【ダウンロード配信の場合】

月間BGM再生回数500曲以上

1台あたり、「月額情報料」の5.6%又は500円のいずれか多い額×受信端末数

月間BGM再生回数500曲以下

1台あたり、「月額情報料」の5.6%又は250円のいずれか多い額×受信端末数

 

【ストリーム配信の場合】

 下記URL使用料早見表の「1 音楽を主とした利用」の「ストリーム」「月額」「サービスメニュー区分:音楽」が摘要となり、月間の情報料及び広告料等収入の3.5%が使用料となります。

URL

http://www.jasrac.or.jp/network/side/hayami.html

2012年3月現在

Q22 BGM用貸出録音テープの録音使用料の支払いはどのようにするのですか?

A22 BGM用貸出録音テープの録音使用料は、録音制作会社である各BGMキー局がJASRACとそれぞれ個別に契約し、それぞれのキー局で製造された該当録音テープおよびCD、カセットについて支払われています。

 

 事務手続きとしては次の通りです。
 各キー局では、BGM制作伝票、顧客台帳、代理店聴取契約報告書などを集計し、①BGM用貸出録音テープ使用報告書、②年間使用楽曲明細書、③顧客一覧表を毎年5月までに作成し、これをJASRACの担当窓口である業務局録音出版部録音一課に提出します。JASRACでは報告件数に基づき、各キー局に対しそれぞれの直接営業顧客及び代理店顧客で使用するBGM用貸出録音テープの録音使用料を計算し、新年度年間使用料として請求します。

 各キー局は、指定の期日までにこれを支払います。JASRACでは各キー局に対し定期的な監査により厳正な管理がおこなわれるよう指導しています。

Q23 BGM用貸出を目的としたCDなどテープ以外のメディアは、BGM用貸出録音テープと取扱いが異なりますか?

A23 通常のBGM用貸出録音テープと同じ取り扱いになります。

 JASRACの「使用料規程」に定められた「BGM用貸出録音テープ」については、BGM用貸出番組として録音製造されたカセットテープ、CD、その他の録音物を含むということが、日本BGM協会とJASRACとの間の協議で確認されていますので、各キー局はそれぞれの録音物についてBGM用貸出録音テープとして処理をしています。

 技術革新により新しいメディアが登場した場合には、その都度日本BGM協会がJASRACに確認をして取り扱いを決定することになっています。

Q24 BGM用貸出録音テープ以外の録音テープの著作権処理はどのようにするのですか?

A24 JASRACの著作物使用料規程第5節に基づき、製造する各社が最寄りのJASRAC の窓口に使用申請をおこない処理をします。

 市販の録音用テープで定価の明示されているものについては、定価の6/100をその録音テープに含まれている曲数で除して得た額または8円10銭のいずれか多い額以内を1曲の録音使用料とします。

 定価の明示の無い市販用録音用テープについては、5分未満の曲1曲に8円10銭以内を加算します。

 その他の録音テープについては、録音テープ1本、1曲について、400円を録音テープの複製本数で除して得た額または8円10銭のいずれか多い額以内とします。

Q25 BGMを契約している店舗やホテルでは、BGMキー局が著作権を処理しているので、改めて著作権使用料を負担することはないと聞いていますが、本当ですか?

A25 間違いです。すべての著作権をBGMキー局が処理しているわけではありません。

 BGMキー局がJASRACと契約しているのは、BGM用貸出録音テープの録音製造に関するもので、BGMキー局が製造するBGM用貸出録音テープに該当する録音物の「録音使用料」についてのみが対象となっています。

 各事業所が演奏装置を通じてBGMを再生演奏することにより発生する使用料、いわゆる「演奏使用料」は、実際に演奏使用する事業所が負担する著作権使用料ですから、キー局の著作権処理対象には含まれておりません。したがって市販CD、BGM用貸出録音テープなどを利用する店舗やホテルでは、BGM事業者と契約している場合はそのBGM事業者が、契約していない場合はそれぞれの店舗やホテルが演奏使用料を支払うことになります。

Q26 演奏または公衆送信伝達に伴う店舗等での著作権処理は、BGMキー局で処理されるのではないですか?

A26 BGMキー局では処理されません。各BGM事業者などの音源提供事業者または利用事業所がそれぞれJASRACと契約をおこない処理する必要があります。

 1999年6月の著作権法改正以前は、適法に録音されたテープやCDなどを付則14条による経過措置が適用された事業所で再生演奏または受信放送する場合には、改めて使用料の支払い義務はありませんでした。

 しかし、著作権法改正に伴い、付則第14条が廃止され、2002年4月からは、利用者である店舗や宿泊施設は、演奏または送信伝達によるBGM使用料をJASRACなどに支払う義務が生じました。この演奏または送信伝達による使用料の支払い方式や金額などについては、JASRACが業界関係団体などと調整して決定しました。

Q27 CMなどの特注BGMの場合、制作の頻度によってJASRACとの年間契約による「BGM用貸出録音テープ」として取扱うことができますか?

A27 できません。「その他の録音テープ」として処理しなければなりません。

 CMなどの特注BGMの制作頻度は、これを「BGM用貸出録音テープ」として取り扱う要件にはなりません。「BGM用貸出録音テープ」とは、JASRACと年間契約を締結したキー局が、年間BGM使用契約を締結したBGM顧客に対して、それぞれの顧客のBGM用途にあわせて定期的に交換配給し回収するという要件を充たしていなければなりません。また、フランチャイジー・代理店の場合は、上記の要件を充たす顧客全事業所について事業所名、契約料金などを聴収料報告書に記載し、キー局に報告しなければなりません。それ以外の顧客については全て「使用料規程」第5節3「その他のCD等」としての処理が必要です。
〔JASRAC 使用料規程 第2章 第5節―3 参照〕

Q28 CMを制作する場合はどのような著作権処理が必要ですか?

A28 著作権者(音楽出版社)、音源会社、JASRACの三者それぞれについてCMの使用許諾を得ることが必要です。

 CMのナレーションを音楽にミックスしたり、音楽の歌詞をCMとして別の歌詞に改変したりする事は、著作者人格権の同一性保持権に関わりますので、CM制作者は、使いたい楽曲を管理する音楽出版社にあらかじめ使用許諾の申請をおこない、許諾を得る必要があります。許諾料については、当事者間の折衝で決定されます。

 次に、その楽曲の音源のCM使用許諾をとらなくてはいけません。キー局がBGM用音源として契約している音源については、キー局、音源会社毎にまた楽曲毎に権利の範囲が異なる場合がありますので、使用条件を確認してください。レコード会社のCDに収録されている曲を使用する場合には、レコード会社にCD使用許諾申請をおこない、許諾を得てください。

 録音複製については、著作権者や音源会社との許諾申請の時の使用条件の確認を得た後、JASRACに対して著作権使用料規定第5節3に定めたとおり、録音テープ1本、1曲につき、400円を録音テープの複製本数で除して得た額または8円10銭のいずれか多い額以内を支払わなければなりません。

 ラジオやテレビでの放送用録音については、局側のブランケット方式による著作権処理に含まれていますので、その場合の録音使用料は不要です。

 最後に、放送される際の手続きです。ラジオ・テレビで放送されるものついては、前述の録音複製についての手続きは不要ですが、別途JASRACに対してCM音楽放送使用料の処理が必要です。

 店内放送などでのパッケージメディアを通じてのCM音楽の演奏あるいは有線放送におけるCM音楽の演奏については、現状では規定がないので特に手続きをとる必要はありません

Q29 BGM契約をしている顧客からのCM制作については、改めて申告を行う必要がないと聞きましたが、本当ですか?

A29 間違いです。BGM契約とCM許諾は、それぞれ別の手続きが必要です。

 BGM契約をしていても、貸出用BGM録音テープの要件をみたしていなければ、特注BGMであれ、CMであれ、制作のつど「使用料規程」に定める「その他の録音テープ」として申告をおこない、録音使用料を支払わなければなりません。

また、楽曲をCMに使用する場合は、前項で説明したとおり、JASRAC、著作権者、音源会社の三者への許諾申請が必要です。

Q30 BGM会社は、衛星やインターネットを使った音楽の配信にBGMの楽曲を提供することができますか?

A30 BGMキー局が音源会社と締結した音源契約の条件、あるいはインターネットの音楽配信形態によります。

 一般的にはBGMキー局の制作したCD-BGMの曲をキー局の承認を得ずに衛星放送やインターネット配信に利用することはできません。BGMキー局は、BGM音源を様々なルートから調達しています。したがってBGM音源として保有する楽曲の権利の範囲も様々ですから、そのつどキー局著作権管理部門に照会するようにしてください。

 またインターネット配信がBGMの用途としての配信か、電子メディア商品としての楽曲販売を目的とした配信かによっても、処理手続きその他の条件が変わります。

Q31 BGM番組を海外で使用することができますか?

A31 海外での使用はできません。

 BGM音源に限りませんが、一般に音楽の著作権及び著作隣接権は、国単位でそれぞれの音楽出版社やレコード製作者に譲渡されたり、管理委託されたりしています。BGMの場合、日本国内でのBGM用貸出録音物としての契約を基本としていますので、特別に許諾を得た場合を除き、これを海外に貸し出すことはできません。

ただし、BGMに使用する音源自体には、極東や東南アジアに及ぶ権利取得をおこなっているものもありますが、提供するBGM番組に1曲でも日本国内でしか使えない楽曲が含まれていますと、その使用が国内に限定され、海外での使用が不可能になります。

Q32 代理店・フランチャイジーは、キー局のBGM番組を自由に複製したり一部使用したりすることができると聞きましたが、本当ですか?

A32 できません。代理店・フランチャイジーは、BGMキー局にロイヤリティを支払っていますが、特に契約により許諾された音源を除いては、BGM製品の音源に関わる複製許諾は行われておりません。

 キー局のロイヤリティは、キー局の録音複製したBGM用貸出録音テープを代理店・フランチャイジーが貸出運用することによって得られる収入に対してキー局が得るべき対価を契約によって定めたものです。BGM用貸出録音テープや収録されている楽曲の音源を譲渡することを含む契約ではありませんから、代理店・フランチャイジーにおける編集や複製、部分使用などをおこなうことは認められていません。

代理店などが無断で録音複製した場合には、キー局との無断複製問題に留まらず、キー局とJASRACの包括録音使用契約や、キー局が音源規約を締結している内外の音源会社、音楽出版社との間の問題に発展します。

Q33 代理店・プランチャイジーがBGMキー局支払うロイヤリティには、著作権に関する費用が全て含まれていると聞きましたが、本当ですか?

A33 間違いです。ロイヤリティに含まれているものは、BGM用貸出録音テープの録音使用料だけです。

 ロイヤリティ含まれているキー局が負担する著作権使用料は、BGM用貸出録音テープに関わる著作権使用料であって、CMや代理店での録音複製その他の使用に伴って発生する権利の使用料は含まれていません。また、付則14条の廃止に伴う演奏権および公衆送信伝達権に関わる使用料についても、これはBGM顧客などの利用者とJASRACとの間の問題で、利用者負担が原則であり、従ってロイヤリティに含まれるということはありません。

 著作権は、メディアの進化発展によって変化していく権利です。新しい利用形態や考え方に基づく新しい権利設定とそれに伴う使用料の設定に対しては、そのつど新しい課金システムの検討が必要となってくるでしょう。

Q34 デパートの店内CM音楽を受注したので、作詞・作曲をそれぞれのアーティストに依頼し、録音制作と完パケ商品の製造までを当社が行いました。この場合、著作権や著作隣接権はどこが保有することになりますか?

A34 一般にCM音楽の著作権は作詞家、作曲家が保有し、著作隣接権は実演家と制作会社が保有します。

 CM音楽の著作権は作詞家・作曲家がそれぞれ保有し、録音制作の時に実演したアーティストが実演家としての著作隣接権を保有します。レコート製作者としての著作隣接権は、実際に録音制作の費用を負担し、録音制作作業を行った音楽出版社やBGM会社などの制作会社が保有し、CM音楽の広告主は権利を保有しないのが商習慣として定着しています。ただし、広告主や制作会社、作詞・作曲家、実演家などの間で著作権買い取りなどの特別な契約を結んだ場合は、この限りではありません。

Q35 ネット配信によるBGMの著作権処理はどのようになりますか?

A35 Q22「BGMの著作権使用料はどのように定められていますか?」の3“ネット配信に関わる使用料”を参照して下さい。

Q36 インタラクティブ配信、ダウンロード形式、ストリーム形式とはなんですか?

A36

 1.インタラクティブ配信…公衆からのリクエストに応じて無線配信または有線電気通信により、コンピュータなどの自動公衆送信装置を用いて著作物を配信することを言います。(ただし、業務用通信カラオケおよび専用端末を用いた家庭用通信カラオケを除きます)

 2.ダウンロード形式…事業者が受信者の受信装置に著作物を複製する配信方式をいいます。

 3.ストリーム形式…事業者などが受信者の受信装置に著作物を複製する意図を持たずにおこなう配信方式をいいます。

インタラクティブ配信については、ダウンロード形式、ストリーム形式による運 用などがJASRAC使用料規程第11節に表記されていますので、ご参照ください。 業務用通信カラオケはインタラクティブ配信とは別に、同規程第10節に定められているほか、B to B(ビジネス・トゥ・ビジネス)の配信についてもB to C(ビジネス・トゥ・コンシューマー)とは別の運用が検討されています。


3.放送局、有線放送、レコード会社などと著作権についてのQ&A

Q37 民間放送局では、放送番組の使用楽曲についてどのように著作権処理をしているのですか?

A37 民間放送局では、一般社団法人日本民間放送連盟(以下民放連)を通じて、音楽著作権に係わる権利処理手続きと金額をJASRAC、日本レコード協会、芸団協との包括的な契約によって定めています。

 放送局における音楽著作権では、放送使用と録音使用の処理がまず必要です。そして著作隣接権の処理を行います。NHKや放送大学、BS、CSなども、同様の著作権処理をおこなっています。

1.放送使用料については、1年毎に放送使用料を包括的に決定して支払うブランケット方式によって前年度の放送収入の1.5%の金額に消費税を加算した額が支払われます。CMについても自社制作CMについてはブランケット方式に含み、代理店、CM制作会社などの制作については別途曲別方式によって処理されます。

2.放送用録音使用料については、著作権法第44条においては、放送事業者の放送のための一時的な録音、録画を一時的固定として、権利者の許諾を個々にとる必要はありません。しかしネットワーク化や再放送など番組編成上の理由から一時的固定以外の録音形態も増えてきたため、JASRACと新たに協議を行い、一時的固定に該当しない6カ月を超えて保存する番組や外部の制作会社が制作する番組での録音使用については、放送局各社との包括契約によってブランケット方式による支払いがおこなわれるようになりました。

3.音楽の著作隣接権については、民放連と芸団協、一般社団法人日本レコード協会(以下、レコード協会)それぞれとの間で基本的な契約が行われ、著作隣接権処理の申請許諾がおこなわれています。その申請許諾に基づき商業用レコードの二次使用料について民放連と芸団協、日本レコード協会との間で毎年協議をおこない、その総額を決定し、放送局ごとにそれぞれ支払いをおこなっています。

Q38 テレビやラジオでは、市販のCDやカセットテープなどを使って自由に選曲したり編曲したりできると聞きましたが、本当ですか?

A38 本当です。しかし、それは著作権法第44条の規定および放送局各権利者、権利者団体との契約によって成り立っているものです。

 放送事業者および有線放送事業者は、放送または有線放送に関わる音楽や映像を放送のために録音、録画し、複製することが認められています。これを放送のための一時固定といい、放送局内での番組の編集制作では、各局のライブラリーに保管されているCDやテープあるいはレコード会社や音楽出版社、アーティストから持ち込まれるCDやテープを番組ディレクターや音効スタッフが、コンセプトによって選曲し、録音編集しています。しかし、それぞれの使用によって発生する著作権については、各権利者を代表する団体であるJASRACや日本レコード協会、芸団協との包括的使用契約や各権利者との契約などによって、著作権処理がおこなわれています。

Q39 海外放送局の番組を録音固定し、日本国内の放送局で再送信する場合には、どのような著作権などの処理が必要ですか?

A39 海外の放送番組を日本で再放送する場合には、海外の当該放送局から日本国内における放送許諾を得るとともに、著作権以外にも、イベントの放送権、またCMを含む場合には、CMのスポンサーの同意などの許諾が必要です。

 放送番組は、放送事業者における二次著作物となります。海外の場合、第一に、その番組の権利を保有している当該放送局からの放送許諾を得ることが必要です。次に、番組コンテンツに含まれる各種権利について、日本で再放送できるよう全ての処理手続きを完了させることが必要です。その場合、日本における権利の代行者がいるか、日本の放送基準に合致しているかなどの調査確認も欠かせません。

以上の手続きを経て海外の番組を日本国内で放送する際にも、国内でそれを放送する局がJASRACに放送使用料を支払わなければなりません。また、現地のCMをそのまま放送する場合には、それぞれのCMについてスポンサーなどの承諾が必要です。オリンピックやワールドサッカー、アメリカメジャーリーグの野球などのスポーツ・イベント、あるいはモントルーやニューポートその他でおこなわれる音楽イベントなど、放送権が設定されているものは通常取り扱うことができないなど、単に著作権だけではなく、権利ビジネスとして幅広いチェックと処理が必要です。

Q40 レコード会社が洋楽について保有している権利はどのような権利ですか?

A40 一般に、洋楽を日本国内で複製し、貸与をおこない、その報酬を受け取り、商業用レコードの二次使用やインターネットなどでの送信に関わる権利を持っています。

 海外原盤会社、音楽出版社などとの契約によって様々なケースがあります。一般に、日本国内のレコード会社が海外レコード・レーベルを持つ権利者(ライセンシー)と契約を結ぶことにより次の権利をサブライセンシーとして管理します。

複製権

貸与権・報酬請求権

商業用レコードの二次使用を受ける権利

送信可能化権

 サブライセンシーとしての契約は、期間と地域が限定されており、その範囲での権利の行使となります。地域は、BGMの音源契約の場合も同じですが、日本国内に限られるのが普通です。契約によって、日本と東南アジア、ニュージーランド、オーストラリア、極東全域といった契約もありますが、あくまでも少数です。

 特に、BGM事業者や広告代理店、その他に対する第3者利用の許諾については、国内レコード会社が日本国内における権利を排他的独占的に行使できる場合は、国内レコード会社による単一手続きで済みますが、非独占的な契約の場合は、国内のレコード会社を通じてそれぞれの権利者に対して手続きをしなければなりません。

Q41 レコード会社の保有する楽曲をBGMとして使用する場合、使用許諾料が各社によって異なったり、楽曲によって異なったりすることがありますが、料金基準はどのように定められていますか?

A41 料金基準は、各レコード会社の内規によって定められています。

 レコード会社は、レコードの製造販売にあたり、国内外のレーベル毎に条件設定をし、契約を結んでいます。また各レーベルは、音楽出版社やアーティストと楽曲、アルバム、その他さまざまな権利に関わる条件を設定し契約を結んでいます。当然、アーティストや音楽出版社、レーベルなどとの関係によっても、金額を含む契約内容がかわってきます。レコード会社では、これらアーティスト、レーベルのランクその他を勘案して、それぞれの使用許諾についての内規を作成し、料金基準を設定しています。従って、使用許諾料が会社ごと、あるいはレーベルや楽曲ごとによって異なるわけです。

Q42 レコード会社のプロデューサーから、自分のプロデュースするアルバムのBGM使用について自分がOKすれば問題はありませんと言われましたが、本当に問題はないのでしょうか?

A42 注意が必要です。レコードの著作権処理はレコード会社としておこなっていますから、プロデューサーの発言はその前提で理解し対処する必要があります。

アーティストとの契約を行うのは、音楽出版社やレコード会社であり、プロデューサーが契約を行っているわけではありません。法人組織の一員としてプロデューサーがそのアーティストを担当し、プロモーションなどを含め、一定の権限を持っているのは事実です。しかし、著作権に関わる問題は、プロデューサー個人の判断で処理されるものではありませんから、レコード会社としての許諾が必要です。

もちろんプロデューサーが、所属レコード会社の承認のもとに、担当するアーティストやアルバムのBGMへの使用を許諾する場合は、問題はありません。

Q43 アーティストによって著作権料は変わるのでしょうか?

A43 変わりません。JASRACが管理する著作物の使用料については、アーティストや人気、市場価値などの要素で金額が変わることはありません。

 JASRACに管理委託されている著作権の使用料は、「使用料規程」において、その利用形態と数量、時間などによって定められており、アーティストや人気、市場価値などによって使用料が変わることはありません。

 しかし、CM許諾料、出演料、作詞・作曲料、著作隣接権使用料などについては、そのアーティストや音楽出版社、レコード会社などとの折衝によって個別に決定されます。

 また、JASRAC以外の音楽著作権管理事業者の管理楽曲については、その都度当該会社に照会することが必要です。

Q44 輸入盤は複製しても著作権に触れないという話を聞きましたが、本当ですか?

A44 間違いです。無断録音となり、著作権の侵害行為になります。

 著作物は、国境を越えて利用されるため、世界各国が条約を結んで、お互いに著作物や実演・レコード・放送などを保護しあっています。このような国際的な保護は、著作権について「ベルヌ条約」「万国著作権条約」、著作隣接権について「実演家等保護条約」「レコード保護条約」によっておこなわれています。我が国は、いずれの条約にも加入しており、世界の大半の国と保護関係が結ばれております。

 従って、海外から輸入されたCD、レコードその他の著作物についても、国内の著作者と差別することなく、同じようにその著作物を保護管理する義務を負っており(内国民待遇といいます)、輸入盤だから勝手に複製してもいいということにはなりません。

Q45 有線放送は著作権をクリアしていますか?

A45 有線放送事業者は、JASRAC、芸団協、日本レコード協会との契約に基づき、著作権処理をおこなっています。

有線放送事業者には、CATV(有線テレビジョン放送)や有線音楽放送、町や村のコミニュケーション・システムとしての有線放送まで、さまざまな事業者や事業形態が含まれております。有線放送事業者として処理しなければならない著作権および著作隣接権は、次の通りです。

著作者、著作権者の保有する著作権

実演家の持つ著作隣接権

レコード製作者のもつ著作隣接権

放送事業者の持つ著作隣接権

 この中で、各有線放送事業者は、①の著作者、著作権者の保有する著作権の処理についてはJASRACと、②の実演家の保有する著作隣接権の処理については芸団協と、③のレコード製作者の保有する著作隣接権の処理については日本レコード協会とそれぞれ契約し、定められた手続きによって放送使用料を支払っています。

 ④の放送事業者の保有する著作隣接権については、難視聴対策などにより再送信の許諾を得ているものもあります。しかし、一部で一般番組からの野球、競馬、株式などの無断再送信や、地域外送信を続けている有線放送事業者もあり、著作隣接権のクリアは完全とは言えないのが現状です。

Q46 有線放送でNHKや民間放送局の番組を流していますが、問題はないのでしょうか?

A46 再送信の同意を得ていない場合には、問題があります。

 有線放送は、NHKや各民間放送に同時再送信の許諾を申請し、承認を得てはじめて放送番組を再送信することができます。許諾を受けていない再送信は、有線ラジオ法第5条により違法行為であり、放送事業者の著作隣接権についての重大な侵害行為となります。NHK、民間放送局ともに都市の地下街や山間部での難視聴対策から承認をおこなっており、ほとんどの再送信は問題がないと思われます。しかし一部で無断再送信や地域外再送信がおこなわれているため、引き続き改善の努力がおこなわれています。

 一方、番組を録音・録画した上で送信する場合には、複製権の処理も必要になります。


4.お店やホテル、イベントなどと著作権についてのQ&A

Q47 市販CDをBGMとして使用する場合、JASRACと契約すれば、他に著作権等に関する許諾を得る必要はないと聞いていますが、レコード会社が使用料を支払うようにいってきました。支払う必要があるのでしょうか?

A47 支払う必要はありません。

 演奏権については著作隣接権がないため、市販のCD(適法録音物)をそのまま再生する方法によりBGMとして利用する場合、著作隣接権に関する手続きはありません。

 ただし、BGM会社など音源提供事業者が営業活動として市販CDを提供する場合には、音源提供事業者が権利処理をおこない、レコード会社その他の権利者に対する支払いをすることになります。

Q48 市中のレコード店から市販のCDやカセットを購入し、これをライブラリーとして在庫してホテルやデパートに有料で貸し出し交換配給をしている業者がありますが、問題はありませんか?

A48 その業者には問題があり、違法の貸しレコード業者となります。

このケースは、CDの「貸与」にあたり、市販されているCDやカセットなどを貸与する場合、

作詞・作曲者などの著作者

歌手、演奏家などの実演家

レコード製作者

に貸与権がはたらきます。従って、一般のレコード小売店から購入し、貸与権の処理手続きをおこなわない市販CDやカセットなどによるレンタルビジネスは、違法となります。このことによって実演家およびレコード製作者から報酬の請求がおこなわれた場合、その報酬を支払わなければなりません。

 また、欧米の実演家およびレコード製作者は、貸与権を行使して、発売後1年以内のCDやカセットの貸与を認めていません。従って、ヒットチャートの最新版や話題の新譜を洋楽で貸与することはありえません。

Q49 ホテルのロビーやスーパーの店内で市販のCDやカセットを使って音楽を流すことは認められていますか?

A49 認められています。ただし著作権の使用料を支払う必要があります。

 ホテルのロビーやスーパーなどが、市販されているCDやカセット、BGM用として録音の許諾をとってつくられたCDなどの適法に録音された録音物を用いて演奏する場合は、著作権者の許諾は要りませんでした。しかし、2002年4月1日から著作権がはたらいておりますので、JASRACと演奏権に関わる許諾契約をおこない、使用料を支払わなければなりません。

Q50 FMやAMなどのラジオ放送を受信して店舗や事務所などでBGMとして使用した場合、著作権使用料はかかりますか?

A50 通常の家庭用受信装置を用いる場合は、伝達権の及ぶ範囲外となり、許諾の必要はありません。一方、館内の音響システム等を用いて伝達する場合など、家庭用受信装置に当たらない拡声装置や設備を用いて伝達する場合は、許諾対象となり、使用料が発生します。

 FMやAMなどの放送を受信して公に伝達することには、著作権者の公衆送信権と伝達権(公衆送信される著作物を、受信装置を用いて公に伝達する権利)がはたらきますが、著作権法第38条3項の定めにより、通常の家庭用受信装置を用いて伝達する場合は許諾の対象から除外されます。

 なお、通常の家庭用受信装置の範囲についての具体的な基準はなく、また、昨今の技術進歩により業務用と家庭用とを区別しづらい現状ではありますが、店舗等に埋め込み式の音響システムや拡声装置を用いるなどして、受信した放送を広範囲、又は大音量で伝達すれば、家庭用受信装置の範囲外と考えられ、その場合は、JASRACと契約し、使用料を支払う必要があります。

Q51 ラジオなど家庭用受信機による個人的使用の範囲についてのガイドラインなどはありますか?

A51 規定で定められたものはありませんが、家庭で個人が楽しむ他に業務で用いても軽微な使用の場合は、個人的使用の範囲内として管理の対象から除外されると考えられています。

 小規模な店舗や露天商が、市販のラジカセやラジオなど家庭用AV機器をそのまま使ってBGMやラジオ放送を流す場合、軽微な使用として演奏または送信伝達による使用料を免除されます。しかし、一般の家電店で市販されている家庭用AV機器であっても、店舗などでスピーカーやディスプレイが来店するお客様や通行する人たちに向けて、据え付け、埋め込みなどの形態で常設されている場合には、通常の家庭用受信装置を用いて行なう伝達を越えた使用としてとして管理の対象になると考えられています。

Q52 FMやAM、テレビなどの放送をそのままカセットやビデオに録音録画して店内の放送設備で再生しBGMとして利用したいのですが、問題はありますか?

A52 問題があります。無断録音・録画は著作権の侵害になります。

 放送番組には、著作権者、実演家、レコード製作者、放送事業者という4者の権利が及んでいます。これら権利者に許諾を得ることなく放送番組を録音してBGMとして利用することは、それぞれの著作権、著作隣接権の侵害となり、違法行為となります。

Q53 ホテルの宴会場でお客様が自分の好きなCDやカセットなどを会場に持ち込み、結婚披露宴のBGMとして使いたいといってきました。問題はありますか?

A53 ホテルがその宴会場について、JASRACと演奏(生演奏、カラオケ、BGMの全て又はいずれか)に係る包括的な利用許諾を結んでいる場合、市販のCDやカセットをそのまま再生演奏する利用についても同許諾の範囲に含まれますので、問題はありません。

 結婚披露宴等を行うほとんどのホテルなどは、JASRACと生演奏、カラオケなどによる音楽利用について契約をしています。ホテルに契約の有無を確認すれば、手続きが必要かどうかについて一定の判断ができます。

Q54 ホテルの宴会場でお客様が自分の好きなCDやカセットなどを結婚披露宴の進行に合わせて編集して流してほしいといわれました。問題はありますか?

A54 問題があります。複製権に関わる著作権および著作隣接権の処理が必要となります。

 持ち込まれた市販CDやカセットを披露宴の進行に合わせて別のテープやディスクに編集して演奏する場合、著作権法上は複製権に関わりますので、そのつどJASRACおよびレコード会社などへの使用許諾手続きをおこない、著作権及び著作隣接権を処理する必要があります。無許諾で録音することは、著作権の侵害になります。

 なお、利用されるお客様が自ら個人的に録音編集してきたテープを会場側がそのお客様の宴会のために流す場合でも、お客様が著作権処理をしているか確認する必要があります。無許諾で録音されたCDやカセットを会場で使われないよう、注意が必要です。

Q55 新しいレストランでBGMの代わりにレコード店で購入したビデオやDVDソフトをモニターで流そうと思います。この場合、著作権上の問題があるでしょうか?

A55 問題があります。自分の店であろうが、個人で買ったビデオソフトであろうが、ビデオやLD、DVDソフトを著作者に無断で上映することができません。正規の処理手続きが必要です。

 ビデオソフトをお店等で上映する場合は、著作権者の許諾が必要です。この場合、上映の著作権使用料が設定された「業務用ソフト」を使用しなければなりません。「業務用ソフト」は映画会社などの映像ソフト制作会社やその代理店などから入手(貸与又は購入)することができます。あわせて最寄りのJASRAC窓口に対して「ビデオグラムの上映」にともなう音楽著作権処理をおこなう必要があります。

Q56 ビデオソフトの「業務使用」とは、具体的にどんな上映形態をいうのですか?

A56 以下にあげる5点が「業務使用」の主なものです。

イベントでの上映

ホテルの各部屋のTVへビデオソフトをながすこと

宿泊客にビデオソフトを貸し出すこと

長距離バス、飛行機、船舶内での上映

その他商業施設での上映

 いずれも、イベント主催者、ホテル、運輸会社などそれぞれの使用者が、「業務用ビデオソフト」の供給を受け、JASRAC窓口に対して「ビデオグラムの上映」にともなう著作権処理をおこなう必要があります。業務用ビデオソフトについては、日本映像ソフト協会または同協会の会員社にご照会ください。

Q57 カラオケ施設における著作権処理はどのように行なわれていますか?

A57 カラオケボックスや飲食店などのカラオケ施設における歌唱については、著作権法上の演奏権がはたらきます。この権利については、各店舗等の経営者がJASRAC の支部と利用許諾契約を締結し、著作権使用料を支払うことにより処理されます。

 近年、JASRACと契約する施設の割合は常時90%を超えており、ほとんどのお店が著作権に関する契約を締結して適法に音楽を利用しています。JASRACと許諾契約を結んだ事業所については、JASRACの発行する許諾ステッカーが店頭に貼付表示されています。

 なお、業務用通信カラオケにおいて発生する著作権の権利としては、他にも公衆送信権(楽曲データの配信)と複製権(カラオケ機器へのデータ蓄積)がありますが、これについては、通信カラオケ機器のメーカーがJASRACなどの権利者との間で権利処理を行っています。

Q58 カラオケ教室で生徒の練習用にCDやテープをコピーしたいと思いますが、問題はありませんか?

A58 問題があります。カラオケ教室等のレッスン用などに市販されている音楽のCDやテープを複製して配布することは、複製権の侵害に当たります。

 また、シンセサイザーやギター、ピアノなど自分の演奏によるオリジナル音源の録音物を製作する場合は、著作権の許諾手続きが必要となりますので、JASRACなどの許諾を得る必要があります。

 先生や生徒の歌を録音して生徒に配布したり、楽譜や歌詞を先生がコピーして生徒に配布したり、カラオケ大会などに応募するため、市販されている音楽のCDやテープのカラオケに先生や生徒の歌を重ねて録音する場合には、作詞・作曲者、楽譜の出版社、レコード製作者の事前の承諾を得ることにより使用することができます。

Q59 コンサートやイベントなどで音楽を演奏する場合には、どのような手続きが必要ですか?

A59 コンサートやイベントで使用する音楽については、JASRACなどに使用申請をおこない、定められた使用料を支払って下さい。

コンサートや音楽を利用するイベントなどをおこなうとき、

営利を目的とする

入場料など料金を受け取る

出演者に報酬が支払われる

のいずれかに当てはまる場合、主催者はJASRACに対して、事前に申込書と使用曲目を提出するなどの手続きが必要です。

1.演奏会・コンサートにおける演奏

 演奏会における演奏の使用料は、それぞれ催物ごとに、定員、入場料、演奏時間などによって決まります。

2.演奏会以外の催物における演奏

 演奏会以外の催物における使用料は、次のような催物の種類や利用形態に応じて定められています。

レビューショー、ファッションショー、サーカス、舞踏会、アイススケートショー、

フィギュアスケート、シンクロナイズド・スイミング、体操競技など、舞踊、演技、

衣装が重要な要素となる催物における演奏

演劇、漫才、奇術、演芸その他の芸能の催物における演奏

楽器店、レコード店、百貨店、スーパーマーケットなどでの宣伝のための催物における演奏

博覧会、展示会、動物園、遊園地その他これに準ずる施設での催物における演奏

野球、競馬、アメリカンフットボール、バスケットボール、サッカー、テニスなど各種スポーツの催物における演奏

航空機、鉄道、自動車、船舶など各種交通機関における演奏

ディナーショーなどホテルなどの施設において、飲食を伴い、演劇、演芸、舞踊、歌謡ショーその他の芸能を客に見せ、又は聞かせることを主たる目的とする催物における演奏

ダンスパーティーなどダンスをさせることを主たる目的とする催物における演奏

その他

〔JASRAC 使用料規程 第2章 第1節 参照〕

Q60 オフィスビルのアトリウムで無料のポップスコンサートをおこないたいのですが、著作権使用料はいくらになるのでしょうか?

A60 コンサートでの著作権使用料は、入場料の有無、公演時間などによって使用料が定められています。

 質問のように入場料がない場合で、かつ公演時間が2時間までの場合の使用料は、定員数に4円を乗じて得た額、あるいは2,000円のいずれかの、多い額となります。公演時間が2時間を超える場合の使用料は、30分までを超えるごとに、公演時間が2時間までの場合の金額に、その25%の額を加算した額となります。また、公演1回ごとに定める使用料のほかに、1曲1回ごとに定める曲別使用料もあります。

 JASRACのホームページの「音楽を使う方(手続きのご案内)」に、公演単位、曲単位での使用料の計算式など詳しい内容が掲載されていますのでお確かめください。

Q61 コンサートの企画で配布するプログラムに楽譜と歌詞を掲載する予定ですが、どのような処理が必要ですか?

A61 コンサートのプログラムに限らず、曲集、ピース、一般書籍、新聞雑誌などに歌詞や楽譜を掲載するときには、出版の手続きが必要です。歌詞や楽譜を用いる 場合には、JASRACなどに許諾手続きをおこなって下さい。

 プログラムに楽譜と歌詞を掲載する時は、コンサートの主催者は、事前に使用料相当額を添えて、所定の「音楽著作物使用申請書」と、使用曲目をJASRACに提出し、許諾番号の交付を受けます。許諾番号は、著作物の掲載個所や出版物の奥付に表示をしなければなりません。曲集、歌詞集、ピースなど、楽曲の掲載が主となる出版物には、許諾証を発行、奥付などに貼付します。外国曲については、権利出版社の許諾が併せて必要となります。JASRAC管理曲以外の曲を使う場合はそれぞれの著作者、著作権者の許諾がいることはいうまでもありません。

 出版の内容によってJASRACでは、次のようにそれぞれの使用料を定めています。

曲集、ピースなど、楽曲の掲載が主となる出版物の使用料は、歌詞・楽曲ごとに、定価のある場合は定価と複製部数によって、定価のない場合は複製部数によって定まります。

一般書籍、コンサートのプログラム、各種パンフレットなどに、歌詞や楽譜を掲載する場合、使用料は歌詞・楽曲ごとに、複製部数によって定まります。

新聞雑誌などに、歌詞や楽譜を掲載するときは、使用料は歌詞・楽曲ごとに、複製部数によって定まります。

パネル、ポスター、歌碑などは、製作数に関わらず1曲について歌詞、楽曲それぞれ定額の使用料が定められています。

カレンダー、プリベイドカード、湯呑みやのれん、ペナントなどの物品に歌詞や楽譜を印刷する場合は、製作数によって使用料が定められています。


5.知ってあれこれ著作権についてのQ&A

Q62 著作権料と楽曲使用料はどう違うのですか?

A62 著作権料は著作者・著作権者に属する著作権の使用料をいい、楽曲使用料は著作隣接権者に属する著作隣接権の使用料をいいます。

 一般的には、著作者・著作権者に属する著作権を使用するための料金を著作権料、著作権使用料といい、通常著作物の利用者がJASRACに対して使用料を支払います。一方、CMへの著作物の使用など著作者人格権に関わる場合は、著作権者に著作物の利用者が直接支払うことになりますので、同じ著作権料ですが、別途手続きが必要です。

 楽曲使用料とは、著作隣接権に関わるもので、実演家およびレコード製作者に帰属する楽曲の原盤(音源)の使用に対して利用者が支払います。この場合は、楽曲使用料というよりも、原盤使用料、音源使用料という方が適切かと思われます。

Q63 著作権印税とはどのようなものですか?

A63 著作権印税とは、著作権や著作隣接権を使用許諾した場合に、その対価として支払われる著作権使用料または著作隣接権使用料を言います。

 発売数量、収録楽曲数などの要素に応じて精算する印税方式と、あらかじめ合意した金額を一括で精算する買取方式の2種類があります。作詞・作曲家や実演家(歌手・アーティスト)の歌唱演奏については印税方式、スタジオ・ミュージシャンの歌唱演奏などは買取方式で処理されるのが一般的です。

 また、原盤制作者がレコード会社または共同原盤制作者から受領する原盤権譲渡または供給の対価を原盤印税といい、実演家が保有している録音権や録画権を原盤制作者やレコード会社へ譲渡する対価を歌唱印税といいます。

Q64 肖像権とはどんな権利ですか?

A64 肖像権とは、判例で確立されてきた権利で、プライバシーに関わる人格権と、パブリシティに関わる財産権の2面から構成されています。

 肖像権という言葉がポピュラーになったのは、写真週刊誌による芸能人やスポーツ選手、政治家その他のプライバシーの問題からといえます。もともと「肖像権」という権利は、法律で定められたものではなく、さまざまな係争事件での判例によって確立されてきた権利です。

 すなわち、人は自分の肖像をみだりに撮影されたり、描かれたり、その肖像を勝手に利用されない権利を保有し、その権利は2つの面を持っています。1つは人格者としてのプライバシーの権利であり、もう1つは財産権としての経済的な利益に関わるパブリシティの権利です。

プライバシーの権利は、自分の写真や氏名がむやみに新聞や雑誌などに掲載されたり、テレビで放送されたりした場合に被る精神的苦痛に対して、肖像権の侵害として訴えることができます。経済的利益に関わるパブリシティの権利について、その人の社会的評価、名声、印象などが、商品その他の宣伝や販売促進に望ましい効果を与えることができる場合には、自分の肖像を、対価を得て専属的に利用させる権利があります。

商品などにタレントの肖像写真やイラスト、氏名・名称などを利用するには、上記の権利が働きますので、事前に利用に伴う手続き処理が必要となり、無断で使用した場合には、商品回収や販売差し止め、損害賠償などの問題になります。

 ちなみに、肖像写真でもブロマイドやグラビアなど、写真家が被写体人物とコミュニケーションをとりながら撮影されたものについては、写真家の意志や個性が反映されるので、著作物と認められています。したがって、ブロマイドやグラビアなどの著作物を利用するには、著作権者の許諾を得ることが、肖像権の処理とあわせて必要となります。

Q65 クラシック音楽には著作権がないので、BGMやCMに自由に使えると聞きましたが、本当ですか?

A65 間違いです。クラシック音楽にも著作権はあります。

 著作権の保護期間は、原則として著作者が著作物を創作した時点から始まって著作者の死後50年までの期間です。クラシックの場合、死後50年を経過した作曲家の作品も多いため、質問のような誤った情報が流布し、全てのクラシック音楽に著作権がないと思い込んでいる人もいるようですが、誤りです。

 また、作曲家の死後50年を経過したクラシック音楽を含む音楽作品をBGMやCMとして録音複製する場合、著作権は消滅していますが、原盤に関する著作隣接権は機能しているので、原盤権の処理は必ず必要になってきます。

 著作権の保護期間について注意しなければならない点は、次の通りです。

1.著作者人格権は、著作者だけが持っている権利で、譲渡したり、相続したりすることはできません。これを一身専属制といいます。この権利は著作者の死亡によって消滅しますが、著作者の死後も一定の範囲で永久に守られることになっています。

2.我が国の著作権の保護期間は50年ですが、国によって保護期間が50年に満たない国やそれ以上の期間を設けている国があります。この場合、保護期間はどちらか短い期間の方を適用することになっています。

3.我が国は、第2次世界大戦において英米などの交戦国との間で国交を断絶しました。著作権法では、国際条約によって国交断絶の期間を保護期間に加算して計算することを定めています。これを戦時加算といい、該当する国の著作物を使用する場合には注意が必要です。

Q66 著作権のない曲はBGMやCMに自由に使えると聞きましたが、著作権のない曲というものはあるのでしょうか?

A66 著作権のない曲はあります。しかし、著作権はなくても著作隣接権は別ですから、音源の使用許諾は必要です。

著作権のない曲および著作権処理の必要がない曲は、

著作者の死後50年を経過して著作権の消滅した曲

古くから歌い継がれてきた民謡や伝承音楽など著作者が存在しない曲

国際条約に加盟していないため保護の対象とならない国の曲

いわゆる著作権フリー楽曲ライブラリーの曲

の4種類です。

 これらの曲は、使用に当たって著作者・著作権者およびJASRACに使用手続きする必要はありません。これらの曲をパブリック・ドメイン(PD)といいます。最近は、いちいち著作権許諾を得ることなく映像やCMなどに自由に使えることを目的に制作されたいわゆる著作権フリー楽曲がライブラリーとして販売されています。

 しかしながら、著作権がない楽曲でも、著作隣接権は機能していますから、そのつど音源使用の許諾を申請しなければなりません。著作権フリー楽曲は、購入時に音源使用も同時に許諾されている例が一般的ですので、その場合は音源使用手続きも不要です。

 なお、著作者人格権だけは永久に保護されますので、著作者人格権を損なわないよう、使用に当たっては注意が必要です。

Q67 ノベルティ商品に音楽を使う場合、著作権処理はどのようにするのでしょうか?

A67 ノベルティ商品の種類によってはたらく著作権が異なり、従って、算定方式や金額が異なります。JASRACの「使用料規程」を確認して処理をおこなってください。

 ノベルティ商品と一口にいっても、音楽著作物を使用したものだけでも、録音テープやCD、オルゴール、音声ファイル、歌詞・楽譜などを印刷したものなど、様々な商品が発売されています。商品によって、CDなど録音権がはたらくもの、カセットブックのように録音権と出版権がはたらくもの、湯飲みやペナントなど出版権がはたらくもの、といったように、さまざまなケースが考えられます。

 JASRACの「使用料規程」では、それぞれの商品における音楽の利用形態によって使用料が定められていますので、確認をしてください。また、利用形態や主旨・目的・内容によっては、著作者・著作権者および音楽出版社、その他、個別に使用許諾申請をおこなわなければならないものもあります。そのつど権利者・管理者などの関係者に確認してください。

 また、レコードその他を音源としてノベルティ使用する場合は、著作隣接権の処理も同時に行う必要があります。

Q68 CMのナレーションには著作権はあるのでしょうか?

A68 CMのナレーションには著作権はありません。

 一般に広告文、標語、キャッチフレーズ、スローガン、タイトルなどは著作物としては認められていません。なぜなら、これらの作品が「思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属する」文化的な価値を持っている作品とは言えないからです。ただし、これらの作品であっても、著作物の定義に当てはまり文化的な価値があると判断される可能性もあります。

それは、文化的な価値は、作品のジャンルや質で決まるだけでなく、時代背景などによって変化していくものだからです。

Q69 ラジオ体操の著作権処理はどのようにするのですか?

A69 ラジオ体操をCDやテープに複製する場合には、通常の楽曲と同様に著作者および著作権者、著作隣接権者の許諾が必要です。ただし、学校や神社などで朝のラジオ体操の場合には、特に管理をおこなっていませんので、手続きは不要です。

 ラジオ体操には、「ラジオ体操第一」と「ラジオ体操第二」および1999年に制定された「みんなの体操」の3種類があります。「ラジオ体操第一」および「みんなの体操」は郵政省簡易保険局(現総務省)が、「ラジオ体操第二」はNHK(特殊法人日本放送協会)が振り付けの著作権者です。伴奏音楽は「ラジオ体操第一」が服部正、「ラジオ体操第二」が團伊玖磨、「みんなの体操」が佐橋俊彦各氏による作曲です。音源は、NHKやレコード会社などが保有しています。

 一例として、ラジオ体操を収録したCDやテープを制作する場合、あるBGM事業者ではJASRACへの申告と音源会社と年間契約を締結し、年間普及本数申告書を作成するとともに、年間使用曲数に一定金額を乗じた額を音源使用料として支払い精算をしています。また、別のBGM事業者では、制作するたびに音源会社に許諾申請をおこない処理しています。いずれの場合も、JASRACでの著作権処理も併行しておこなっています。

 「朝のラジオ体操の会」など学校や神社などで、ラジカセにセットした市販のテープによって地域の人たちが集まり、ラジオ体操をおこなっている場合、営利を目的とせず、かつ入場料などを取っていないので、著作権処理の手続きや著作権使用料の支払いは必要ありません。

Q70 ウェストミンスター寺院の鐘の著作権処理はどのようにするのですか?

A70 ウェストミンスター寺院の鐘といわれるメロディには、著作権はありません。したがってJASRACや音楽出版社との間で著作権処理をする必要もありません。

 ウェストミンスター寺院の鐘といわれるメロディには著作権はありませんが、著作隣接権がはたらくので、レコードやCDに収録されたウェストミンスター寺院の鐘を音源として音声ファイルや別のCDに録音する場合、レコード製作者に音源使用許諾申請をおこなわなければなりません。ただし、自社でこれを録音制作することはできます。この場合、著作権処理は、PD曲ですから必要ありません。その上、録音使用し、音源使用許諾を与えることにより音源使用料収入を得ることが可能になります。

Q71 CDやMDなどの再生デッキの中には、内蔵メモリーやICカードを使って曲順をプログラミングして任意の時間に任意の曲を流すことができますが、これはアルバムの改変にならないでしょうか?

A71 アルバムの改変にはなりません。

 メーカーが演奏機にさまざまな編集再生機能を付加したものを発表していますが、その機能はあくまで個人が音楽を楽しむ範囲で利用することを目的として付加されていますので、利用者が演奏機の機能を使って私的に再生するのに何ら問題はありません。

 ただし、業務用などの目的以外の使用については当然制限を受けますので、業務用として録音編集する、販売を目的に複製を行うなどした場合は、当然著作権に触れるわけです。

 なお、BGMキー局が制作するBGM番組は、もともとBGM利用客の営業時間に対応するよう楽曲の制御を前提に番組制作をおこない供給していますので、特別の指定のある番組を除いて問題はありません。

Q72 2台のCDプレーヤーでそれぞれ音楽とCMを流した場合、その音楽はCMにシンクロしたとしてCM処理をしなければなりませんか?

A72 CM処理をする必要はありません。

 アンプやスピーカーがそれぞれ別系統となっていて、単独で流れてきたものについては、問題がありません。

 しかし、タイマーやID、センサー、ミキサーなどにより技術的にシンクロさせて再生した場合には、CM音楽と同様の判断がなされる可能性があります。

Q73 複数の曲を使ってメドレー曲を制作する場合、著作権処理はどのようにするのですか?

A73 使用されている1曲ずつに著作権、著作隣接権の処理が必要です。

 メドレー曲を制作する場合には、原曲の変更、切除その他の改変をおこなうという点で著作者人格権のうち同一性保持権(著作権法第20条)に、原曲を編曲もしくは変形するという点で翻訳権、翻案権等(同法第27条)に関わりますので、使用する曲それぞれについて著作者と著作権者の許諾が必要です。

 次に、メドレー曲の録音使用料については、JASRACの「使用料規程」により、JASRACに許諾申請をおこないます。具体的には、メドレーを構成する曲が1曲あたり1分40秒未満の使用の場合を断片使用、1分40秒以上の場合を通常使用といいます。通常使用の場合、5分以下を1曲、5分を超える曲については5分を超えるごとに1曲として計算します。断片使用の場合については、減額措置が講じられますので、編曲制作にあたってはJASRAC窓口で確認してください。

Q74 自分で作曲した曲を仕事で使った場合、著作権料を会社に請求できますか?

A74 作品が職務上作成されたものかどうか、また、就業規則や雇用契約の定めによって取り扱いが変わります。

 音楽に限らず、各種著作物や特許、実用新案、意匠・デザイン、また企画提案や設計開発などの知的財産について、特別の定めがない限り、職務上制作したものは、企業に属すると考えるのが一般的でした。しかし最近知的財産権の帰属または評価についてさまざまな議論がおこなわれていますので、新しい視点からの判断が必要と思われます。

職務上制作した著作物であっても、公表するときに個人の名義で公表され、契約や就業規則で職員を著作権者とする定めがある場合、その著作物の権利は個人に属することができます。

職務上制作されたものではない場合は、会社がその作品の購入または発注を決定して初めて著作物の制作・使用の対価が発生しますので、両者の協議による契約がおこなわれることになります。また、その作品がJASRACに委託管理されている場合、BGM会社の年間申告処理またはCMなどの個別申告処理で支払われた使用料がJASRACを通して配分されることになります。

Q75 電話の保留音にBGMを使った場合、著作権処理はどのようにすればいいのですか?

A75 電話機に内蔵されている保留音を除いて、録音については録音業者が、再生演奏については電話機の使用者が、それぞれの規定に従って手続き処理をします。

 一般の会社などで、電話保留再生装置などを用いた保留状態のときの保留音楽、またはテレフォンサービスによる番組が再生演奏するようにした場合、いずれも1年間の年間使用料として回線数に応じて定められた金額に消費税を加えた額をJASRACに支払わなければなりません。

 この手続きは、保留音またはテレフォンサービスを提供する電話機の使用者がおこなうもので、録音業者がおこなうことはできません。

 保留音やテレフォンサービス番組の使用期間が1年未満の場合は、1カ月1単位として年間使用料の1/12の額に使用単位の月数を乗じた額を支払います。また、音楽を背景的または付随的に使用する場合は、使用料が50/100となります。

 電話機にあらかじめ内蔵されている保留音については、電話機のメーカーが製造時に処理をしていますから、使用者が改めて処理をする必要はありません。

Q76 カラクリ時計を広場のシンボルとして制作納入します。ご当地にゆかりの歌曲を毎正時に流して時刻を報せます。このような場合の著作権処理はどのようにすればいいでしょうか?

A76 カラクリ時計で使われる音楽については、著作者、著作権者の許諾が必要となりますので、JASRAC等へ照会し、必要な手続きをおこなわなければなりません。

 カラクリ時計で使われる音楽については、複製権がはたらきますので、著作者または著作権者の許諾が必要です。国内の童謡はほとんどの作詞家・作曲家がJASRACに信託譲渡しているので、JASRACに照会すれば手続きなどをおこなうことができます。

 JASRACに信託譲渡していない曲の場合は、直接作詞家・作曲家または著作権者の許諾を得なければなりません。

 次に、カラクリ時計の録音にあたって、曲の一部だけを使うなどの編曲をおこなう場合は、同一性保持に関わる著作者人格権および翻案権に関わりますので、JASRAC等で複製権を処理する前に、著作者および著作権者の同意を得る必要があります。そのカラクリ時計のためにオリジナルで作詞作曲した場合にはその限りではありません。

 また、2002年4月から演奏権が働くようになりましたので、広場が演奏権の管理対象施設か当面管理除外施設もしくは免除施設かの確認も必要となります。管理対象施設の場合、演奏権の使用料が発生しますので、事前にJASRAC等へ照会するようにしてください。

Q77 ダビングサービスを利用して音楽ソフトやビデオソフトを複製することは違法ですか?

A77 違法です。私的な利用か否か、有料か無料かは問いません。

 ダビングサービス用として店頭に設置された自動複製機器を利用することは、本人の自作自演のものや他人の著作物を含まないものを複製する以外には、著作権者などの許諾を得ていない場合、すべて違法となります。

 仮に、店員が操作しないで客が自ら操作した場合でも、店が違法複製をおこなっているとみなされ、営利を目的として自動複製機器を設置し、著作権などを侵害する複製に使用させたとして、罰則が適応されます。

Q78 海賊盤のカセットやCD、ビデオソフト、コンピュータープログラムなどを購入することは罪になりますか?

A78 購入するだけなら罪になりません。

 海賊版の購入は、著作権法上、権利者の権利が及びませんので、購入自体が著作権の侵害行為になることはありません。しかし、海賊版と知りながら販売目的で国内外から購入する、店頭に並べる、頒布するなどする、業務で使うコンピュータにインストールして利用するなどした場合には、著作権を侵害した行為となり、民事上、刑事上の責任を問われることになります。

 単に海賊盤の書物や音楽・映像ソフトなどを個人で購入して使用すること自体に問題はありません。だからといって、問題がないからと海賊版を購入することは望ましいことではありません。

Q79 社内研修会などで、放送番組を録音・録画したものを教材として社員に見せたり聞かせたりすることはできますか?

A79 放送番組の著作者の許諾なしでは、おこなうことができません。

 学校その他の教育機関であれば、先生が授業に使用するために放送番組を録音・録画する場合、改めて権利者の許諾を得ることなくおこなうことができます。しかし、企業の研修や予備校等で教材として利用する場合は、営利目的とみなされ、著作者への権利の制限は及びません。したがって、許諾を得ずに録音・録画することはできず、無断で複製した放送番組を見せることはできません。

Q80 ホームページに著作物を提示する場合、どんな点に注意しなければなりませんか?

A80 ホームページは、さまざまな著作権、著作隣接権がはたらく著作物であり、海外の著作権法の及ぶ場合もありますので、十分な注意が必要です。

 インターネットのホームページを作成する場合には、音楽や写真、図表・文、イラストなどで構成し、これをパソコンの記憶装置に蓄積しますが、この蓄積する行為そのものが、著作者の複製権、実演家の録音権、録画権、レコード製作者の複製権などの対象となります。

 次に、ホームページに掲載された著作物などは、公衆のアクセスによって著作物の送信がおこなわれることになるので、著作者の公衆送信権や、実演家とレコード製作者の送信可能化権がはたらくことになります。

 したがって、インターネット上にホームページを掲載する場合には、使用する著作物などの著作者その他の権利者にあらかじめ許諾を得ることが必要です。音楽の使用については、JASRACにおいて使用料規程が定められており、商用・非商用いずれも許諾手続きが必要です。

 また、インターネットが国際間で送受信される場合には、発信地主義といって、実際に発信行為がおこなわれた場所の著作権法が適用されるという国際的な合意がおこなわれていますので、各国の著作権法に注意が必要です。

Q81 デジタル機器で音楽を録音・録画する場合は、補償金を支払わなければならないと聞きましたが、どのように支払うのですか?

A81 補償金は、機器やディスク、テープなどのメーカーが支払っています。個人が、自身が楽しむために録音・録画のためのディスクやテープなどを購入する段階で既に処理されていますから、あらためて補償金を支払う必要はありません。

 個人的に、または家庭内その他これに準ずる範囲内において使用する場合、その使用者は権利者の許諾を得ることなく録音・録画することができます。しかし、デジタル方式によって録音・録画する場合は、従来通り許諾は必要ありませんが、補償金を権利者に支払うこととなっています。この制度を「私的録音録画補償金制度」といい、1993年6月から録音について、1999年7月からは録画についても実施されるようになりました。

 この制度は、個々の録音・録画のたびに保証金の処理をすることが困難なことから、録音・録画機器および記録媒体の販売価格にそれぞれの補償金を上乗せする形で一括処理するもので、文化庁長官の指定を受けた私的録音補償金管理協会(SARAH)が録音を、私的録画補償金管理協会(SARVH)が録画を管理しています。補償金の対象となっている録音・録画機器および記録媒体は、現在次の通り政令で定められており、今後も録音・録画機器および記録媒体の技術革新にともない追加されてゆくものと考えられます。